2011年2月7日月曜日

「ネットワーク型」価値創造企業の時代―アライアンスによる新事業戦略
R.ノルマン R.ラミレス著 中村元一訳 平成8年7月 出版




第一部 今日のビジネスを形成している歴史的・技術的な牽引力
1章 ビジネス世界における新しい論理の出現
・ビジネスは、現在自らの理論を革新しているプロセスの途上にある。経営の実践、プロセス、機構を革新しようとする前に、まずこの基本的な点を理解しなければならない。(p39)
・制度化された官僚的な経営世界は形骸化してしまい、多くの場合には企業発展のとって重大な「ブレーキ」となる。マネージャの心は、自分を取り巻く目先のことのみに心を奪われ、マネージャの物の見方も、自社の環境適応の妨げになっている。(p40)
・著者の研究から導かれた結論によれば、現在の経営世界の多くを支配している基礎的な論理、コンセプトの枠組みは、現在出現し始めているビジネス世界の論理とは基礎的に位相を異にしている。(p42)

2章 ビジネス世界における成功要因の変遷
・初期の経済活動は、天然のモノ(農水産物)であれ鉱物であれ、新しい材料の抽出およびその貿易に基づいていた。この「抽出」経済におけるキーとなる主要成功要因は、原材料に対するアクセスの確保(立地、抽出用具、輸送手段)に関係していた。(p43)
・職人に基礎を置く前工業経済および工業経済は、当初の(抽出・貿易)経済とは異なる活動、-材料および資源の製品への転換-に中心を置いていた。この「転換」経済におけるKFSは、エネルギー資源(風車、水車)から生産知識の獲得へと変遷していった。(p44)
・ラリー・ヒルシュホルムはその著書(Beyond Mechanization(1984 ))の中で、技術進歩は経済の立役者がステップを踏みながら、次第に制約から免除されていくプロセスであるという議論を展開している。(p44)
・工業経済発展期での成功は、製品の製造(<課業の専門化>、<課業の標準化>、<大量市場>、<大量生産>)と製品の販売にも基づいていた。(p45)
・工業経済後期での成功要因は、製品の販売を保証するための資源を能率的に使用することを可能にする知識(マーケティング知識)が決定的なKFSになった。(p46)
・ポスト工業化時代のKFSは、生産知識やマーケティング知識の優位性に依存するのではない。それは工業経済の形態、価値創造の形態においては未開拓で、しかもほとんど未活用の他の資源の活用に依存するのである。(p47)

3章 21世紀型セクター・モデルを求めて
・ガシュニとマイルズが雇用面から議論したように、そして著者が価値創造面から本書で主張するように、現在出現し始めている経済のもとでは、この財とサービスの伝統的な区分はもはや約に立たない。(p50)
・多くの製品は、かつてはサービスとして販売されていた構成要素のパッケージであることは、ほとんど自明である。(p51)
・サービスは、製造とは異なる一組の価値創造活動を構成する要素なのではない。サービスは、財に取って代わることはない。したがって「ポスト工業化」は、全ての活動がサービス志向型になろうとしているので、現在の経済時代に「サービス経済」というラベルを付けることに私どもは反対である。(p53)

4章 マイクロプロセッシング技術がもたらした変革
・マイクロプロセッシング技術は、一秒の何分の一という短時間の中に、何百万という課業を追行することができる。そのおかげで、光通信およびデータの貯蔵もあいまって、活動および資源が他人にも広く活用できるようになる。(p57)
・マイクロプロセッシング技術のおかげで、機器は多数の機能を遂行することができる。(p58)
・あるビジネス状況の中では、どんな立役者でも-経済価値を創造している人ならば誰でも-時空間の次元の中で機能を営んでいる。(p61)
・ある特定の時空間の状況の中で、行動を行うための<選択肢>が増大しても、<実際の>行動が増大するわけではない。選択肢の濃密性の向上は、ある特定の行動を行わないという選択肢を意味するかもしれない。(p63)
・マイクロプロセッサーによって可能になった作り付けの多機能型の資源は、選択肢を増大させる濃密性の増大を可能にしている。(p64)
・資産は価値創造活動の累積である。(p64)
・農業経済では、立地へのアクセスが保障された資産と、貿易対象になる原材料を抽出する抽出・農業機械のような他の資産が結合された。工業経済では、生産知識を具体化する資産は、貿易対象になる資産を創造するための資産(生産設備)と結合された。(p65)
・マイクロプロセッシング技術は、経済活動の構造を革命的な形で革新し、資産の結合に対する時空間の障壁をさらに自由にした。(p65)
・「濃密製」および「流動性」はマイクロプロセッサーが獲得した資産の決定的に重要な二つの特徴である。(p67)


第二部 ネットワーク型価値創造の展開
1.パートナーとの共同価値生産
5章 製品とは何か?
・どんな「財」であれ、「財」というものは、非常に多数の立役者が遂行する活動を信じられないほどに複雑に組み合わせた物理的な具現物であると考えるのが有益なのである。どんな「サービス」であれ、「サービス」も同じ理論に従っている(P74)。

6章 提供作品パッケージの濃密製と価値創造
・提供作品パッケージは、財およびサービスの両方またはそのいずれかのこと(P76)。
・提供作品パッケージが顧客企業それ自体の活動に対してより多くの選択肢を提供するにつれ「濃密性は高くなる」(P76)
・提供作品パッケージは、顧客のために、そして顧客と共同で価値を生産するために異なった時間と場所で共同する多くの立役者を巻き込む価値創造活動の複雑な組み合わせの結果なのである(P76)
・トンプソンは組織の部門間の三つのタイプの関係を説明した。それは、「プール型」、「逐次型」、「双方向型」の関係がそれで、「双方向型」は時空間の制約が除去されたことによって、流動性および濃密性が立役者たちのインターフェイスにもたらしたものなのである。連鎖型付加価値コンセプトは「双方向型」を包含していない(P79)

7章 価値共同生産の事例
・自動車販売に見る価値共同生産の立役者はメーカー、流通、ディラー、顧客。メーカー→流通→ディラー→顧客の価値連鎖の関係以外にも、各立役者は他の三者からのインプットのおかげで、どの立役者ももっと効果的にビジネスを展開できる。そして、どの2者間の関係を見ても、果てしなく続く次の段階の相互援助を目的として相互に援助し合っている。

8章 顧客企業にとっての顧客
・もし、当社の顧客企業が新しい競争に直面して生き残れるほどに強力でなかったら、その理由は、顧客企業と当社ぐるみで、適切な価値共同生産関係を持っていないからに違いない(薬品流通企業のマッケソン社の気づき)(P84)
・マッケソン社は、その時点まで顧客企業に提供してきたのとは異なる作品パッケージを提供しようと決意し、「顧客企業の成功こそが当社の成功なのです」というスローガンを採用した(P85)
・このスローガンを採用することで、自社ビジネスの対象分野を多くの立役者(利害関係者)にまで拡大し、顧客企業の課題(売れ筋商品、お金の流れ)を見つけることができた。(P86)

9章 立役者間の活動の移転-構造革新
・価値創造システムは2人以上の立役者を巻き込むので、分業を伴う。立役者たちは、それぞれの活動を遂行するために相互に協力し、しかも相互協力を目的にして相互に協力する。(P93)
・さらに、価値の共同生産関係においては、その課題の構造それ自体も共同生産の対象になるので、異なる立役者たちに対する活動割り当ても革新の対象になる。(P93)
・活動の割り当ての構造革新の方法にとってのキーとなるのは、<負担軽減>および<機会付与>というコンセプトである。(P94)
・企業活動は、単位あたりコストの低下および非能率なそう互助成をめぐる戦闘を目的とするだけではなく、①リスク共有化、②リスク吸収、③リスク管理の最適化を目的として、割り当ての革新を行うことが増えている。(P95)
・「顧客」「サプライヤー」という言葉は、価値共同生産関係を間違った方向に導きつつある。この立役者は両方とも「サプライヤー」であり「顧客」である。価値の差異の存在が認識されたときには、貨幣が価値の差異を評価する。(P96)

10章 パートナー企業との間の価値共同生産の革新てきな関係
・ポルシェは、自社のエンジニアリング・ノウハウの潜在能力を認識しているので、ボルボおよびシアートのように、開発プログラムの加速化が必要な非競合の自動車メーカーに対して、自社の知識を販売し始めている。(P97)
・シアートとポルシェの両者は、パートナーシップを通じて価値共同生産を行うことによって、それぞれの単独型経営のコスト負担要素を、売上高を創出する競争力のある価値創造要素としての提供作品パッケージに転換させる効果的な方法を創造している。(P98)
・連鎖型付加価値のコンセプトが説明している製造企業の世界における関係と対比すると、価値共同生産における関係はもっと複雑で、もっと多方向で、もっと同時的である。(P99)
・価値の共同生産を行うパートナー企業は、新しい関係を構築することを通じて、価値の共同製造を行っているのである。

2.提供作品パッケージと価値創造の論理
11章 マイクロレベルのアプローチの重要性
・「マクロ」経済を理解するためには、経済取引の正に本質(分析の「マイクロ」レベル-を批判的に検討する必要がある。(P102)
・いくつかの期間は価値の交換によって生計を支えており、この価値の交換は、結局は比較優位性の原理に依然として基づいている(p103)
・取引は、複数の立役者の間の「提供作品パッケージ」の交換を対象とする。提供作品パッケージが変化するのに応じて、そしてパッケージがもっと共同生産型になるのに応じて、それを取引する機関も同じ方向をたどる。(P103)

12章 マイクロレベル-その構造に対する観察
・経済取引の主題は、値札を持つ活動および資源、この両者あるいはそのいずれかの交換である。
・価格は①サプライヤーによる行動、②顧客がサプライヤーの行動に対してアクセスを獲得するか、それを所有するために遂行する行動、この両者の間の差額を示している。(p105)
・「知識」、「資源」、「活動」は、それぞれ個々の使用者にとっては時空間における多種多様な方法で明示される。この三つの資源がそれぞれの使用者に利用可能になる方法を選択することが、ビジネス開発のキーとなった構成要素なのである。(P106)
・資産および資源は、ある特定の目的のために構造化されている活動の<蓄積>である。この活動には、天然資源に対するアクセス、資源の複雑な転換、基礎的な技術および科学に関する知識開発がある。(P106)
・顧客の購入対象が「製品」であろうと「サービス」であろうと、顧客は実際には<資源へのアクセス>を購入するのである。(p106)
・具体的な財の中にパッケージ化された活動は、その時代の大量生産の規模の経済にもっと容易に適応していた。(p107)
・サービス活動は、規模の経済から便益を得るという目的ではデザインしにくかった。(P107)
・サービスが「製品化される」ときに限り、規模の経済は達成された。(p107)
・多機能型のマイクロプロセッサー技術に伴って、ある特定の製造システムあるいは他のどんな資産でも、複数の目的のために、そして異なる製品パッケージのために使用できる場合が増えてきている。このおかげで競争力あるコストが実現できる(p108)
・多様性が数量に取って代わっているが、コストおよび活動の共有化は依然として必要。(p108)
・営業取引の中に盛り込まれた知識および活動の移転が、具体的な証明の形では表現されずに、ある特定の時空間における人々の活動・システムを包摂しているか、その活動に中心を置くときに、工業経済ではそれを「サービス」と呼んだ。(p109)
・容易に移転可能な具体的に明示化した物(財)という形に人間行動を「包み込む」方法が一つもみつからないときに、多くの「サービス集約型」の提供作品パッケージは存在する。(p110)
・規模の経済に中心を工業経済では、サービスが経済的に生き残るためには「製品化」する必要がある。(p110)
・アクセスはサービス経済(価値共同生産経済)の範囲の経済が提供する所有権の移転に対する一つの代替案である。(p110)
・提供作品パッケージの競争力を決定するのは、どれだけ多くの原材料の所有権を移転するかという点ではなく、どれだけ効果的に生産資源をアクセス可能にするかという点である。(p110)
・提供作品パッケージには、時間の次元(過去の活動を蓄えながら将来の潜在的な活動のコードを包摂)、空間・立地の次元(同時性に対する地理的な土台付け)、経済の立役者間の次元(提供作品パッケージの中の社会システム)の3つの次元がある。(p112)
・提供作品パッケージのデザイナーは、最適な価値創造のためにどれだけ異なる立役者たちの活動を構造化(誰が、何を、いつ、どこで、誰と行うのか)しなければならない。(p112)
・デザイナーは、提供作品パッケージの立役者の役割(境界線)を定義し、比較優位性の原理によって適切な立役者に割り当てる。(p112)

13章 連鎖型付加価値を超えてネットワーク型価値創造へ
・ネットワーク型価値創造コンセプトでは、企業が提供する作品パッケージは、経済の立役者が価値を共同生産するために集合する境界である。(p113)
・顧客は提供作品パッケージの受動的な注文者/購入者/利用者であるだけでなく、その多くの他の消費方法に参加する。(p114)
・語源学的に見れば、消費は価値の創造を意味する。(p114)

14章 コード化情報要素としての提供作品パッケージ
・顧客企業がある「財」や「サービス」を購入するときは、自社の課題に際してそのパッケージがどんな援助をしてくれるか、とういう点には関心を示すが、そのパッケージの構成要素には関心を示さない。(p116)
・ある提供作品パッケージの効果性は、そのパッケージがいくつかの活動をどれほど上手に「包み込んで」いるか、そしてその活動をある時空間単位の範囲内で使用者/消費者にどれだけ上手に利用可能にしているかという点に関連している。(p116)
・提供作品パッケージ・コードは、そのパッケージによって利用者が行えること、行えないことに関する支持を使用者に与えるので、利用者の活動の引き金を引くのである。(p116)
・コードは提供作品パッケージの作り付け型の指示要素であるので、顧客・消費者行動に影響を与えるので、顧客企業に対する提供作品パッケージの価値は、そのコードが顧客の他の経営資源にどれだけ上手に適合するか、という点で決まる。(p117)
・この<適合性>の程度が、提供作品パッケージの<リバレッジ価値>を決定する。(p117)
・適切なコードがなければ、顧客は、提供作品パッケージの中に「包み込まれている」貯蔵された活動の潜在能力を解釈・評価することはできない。そうすると、そのリバレッジ価値は低くなり、場合によっては不在になる。(p117)
・コードは、保障のような価格要素、製品の物理的なデザイン、サービス環境の整備、顧客への個別相談、広告のようなマス・コミュニケーション、指示ガイド、包みなどに示される場合がある。(p117)
・価値提供企業と顧客企業との間の活動は最適化の問題であり、どのパートナーが最もよく、最も早く、最も安く、最も清潔で、その他の点でベストであるか、ということに関連する。(Van der Heijiden,1993)(p119)

15章 リバレッジ-顧客企業の価値創造への貢献のてこ
・価値提供企業および顧客企業間の潜在的な価値創造活動の適合性を向上させる、提供作品パッケージ・コードの適合性は、顧客企業が価値を入手するという目的に<現実に>一致していなければならない。この点で<リバレッジ>というコンセプトが出てくる。(p120)
・効果的なリバレッジは、提供作品パッケージを提供する企業が自社のビジネスで何を達成するか、という点によって決定されるのではない。それは、顧客企業の価値創造の達成に対して何を援助したか、という点によって決定される。(p120)
・リバレッジの一つの手段は、顧客企業の顧客を提供作品パッケージのデザインの基礎として直視することである。(p120)
・顧客企業に対する優れたサービスは、共同問題解決プロセスの成果なのである。そのプロセスは、作品パッケージ提供企業は、両者の共有活動を適合するもっと効果的な手段を通じて、価値創造をさらに推進する新しい方法を発見するために、自社および顧客企業、この両者の知識を統合するように努める。(p121)
◆負担軽減型の提供作品パッケージ
・<負担軽減>とは、比較優位性がそれを保証する場合には、顧客企業がそれまで自ら行っていた-あるいは行うことができた-活動を、価値提供企業に対して割り当てることである。(p122)
・「経済の第三者化」という意味でのいわゆる「サービス産業」急激な増加の多くは、①クライアント企業の中核活動に直接関係の無い活動の「パッケージの解体化」、②「構造面での社外化」、③「資源の社外調達化」に関連がある。(p122)
・負担軽減という作品パッケージの提供は、サービスの形態以外にも、「財」という具体的な形態で明示化される場合(ライダー・システム)や、所有権が移転している「財」(ドリル)の場合も多い。(p123)
◆機会付与方の提供作品パッケージ
・提供作品パッケージが<機会付与>の役割を演じる価値提供企業および顧客企業の間の関係は、顧客企業がそれまで別の方法で行うことができなかったビジネス、もっと効果的には行うことができなかったビジネスを支援する。(p123)
・機会付与が積み重なると、顧客企業の生産システムは、もっと効果的に構造革新を行うことができる。(p124)
・どの提供作品パッケージも、「本来は」軽減負担方や機会付与型であるわけではない。これらは、提供作品パッケージが顧客企業の価値創造活動にどれだけ効果的にピッタリとはまり込んでいるかという適合性の関数なのである。(p124)
・金融サービス産業においては、①クライアント企業の<ために>仕事を行う企業、②クライアント企業それ自体が事故保険企業や社内銀行のようなビジネスを開始するのを<援助した>企業、この両者の間に多くの闘争があった。(p125)

16章 企業ごとに代わる価値創造の論理
・関心の焦点を顧客へ提供している製品から顧客それ自体に移行することで、企業は自社を一つの支援システムとして眺め始める。(p126)
・当初の製品は、提供作品パッケージの顧客基盤にアクセスするための<歴史的な>手段となる。提供作品パッケージのデザインが展開される源泉は、この歴史的な基盤なのである。(p126)
・こうした方法で提供作品パッケージを検討すると、それは「現在も行われている」仕事の共有の処方箋であるだけではなくて、一つのダイナミックなプロセスなのである。(p126)
・必要な生産的な知識は、ビジネス・パートナーあるいはその他の手段を通じて、また顧客企業の価値創造の論理の創造的な解釈の革新を通じて、アクセスするか買収することも可能であることを考慮すれば、賢い作品パッケージ供給企業は、こうした顧客企業との間でもっと効果的な共同生産関係をデザインすることができる。(p127)
・著者がここで提唱したいアプローチは、顧客企業の<ニーズ>を識別・充足することに躍起となるアプローチではない。むしろ、作品パッケージ提供企業としては、その顧客企業の活動プロセスを補完する活動を識別し、それを提供することに集中するアプローチの方がもっと役に立つし、戦略的にも適切である。(p127)
・顧客企業は価値を達成する行動に従事するが、それには資金的な価値だけではなく、社会的・心理的・芸術的・倫理的な価値も含まれる。優れた作品パッケージ提供企業というのは、顧客企業がもっと効果的に価値創造を行うのを援助する企業である。それと同じように、作品パッケージ提供企業が留意すべき点は、「もっと効果的に」という意味はコスト削減という意味だけに留まらずに、もっと多くの意味を持っている、という含意である。(p127)
・その具体的な内容の共通項は、顧客価値および、顧客企業にとっての顧客(価値のタイプ次第では、子供、奥さん、隣人、地域社会も含まれる)がそれらの項目に価値を認めてくれることである。(p128)
・価値を創造するためには、常に価値創造者の立場にいる顧客企業は、伝統的な表現を使えば「財」、「サービス」、「情報」の支援、現代的な表現を使えば提供作品パッケージおよびそのコードの支援を必要としている。(p128)
・具体的な物、個人の活動あるいはシステムの活動、情報の三者はすべての提供作品パッケージの必要な構成要素である。(p128)
・価値創造の論理は顧客企業ごとに変わるので、特定の顧客グループの価値創造活動にケース・バイ・ケースで統合することが提供作品パッケージ提供企業のキーとなる仕事である。(p128)

17章 提供作品パッケージの固有の次元
・顧客企業の価値創造の論理にピッタリとはまり込むためには、各々の特定の顧客企業に対して「適切な」場所で、「適切な」タイミングに。「適切な」形態で、「適切な」立役者が提供作品パッケージを納入する必要がる。(p131)
・スタンディビス(1987)が指摘したように、どんなときにも、どんな場所でも、ジャスト・イン・タイムで入手できるトレンドにある(p131)
・技術制約の崩壊がもたらしている一時的な柔軟性の増大によって、提供作品パッケージを時空間の中にもっと正確に位置づけることが可能になり、時間の節約、時間の充実をもたらす。(p132)
・活動を最も能率的に追行できる場所に、その活動を具体的に分散させ、再配分する能力も顧客企業との価値創造関係を獲得・維持するために不可欠になっている。(p132)
・提供作品パッケージの次元は、<範囲>、<時間の地平線>、提供作品パッケージが許容する活動の<選択肢>である。(p133)
・ボルボは自動車の販売企業であるという視点を捨て去り、自動車の所有およびその利用を支援する企業である、という視点に展開した。このとき、自動車は顧客の価値創造システムへの参入点と見なせ、提供作品パッケージの範囲拡大の起点となった。(p135)
・提供作品パッケージの<時間>の次元は、顧客との価値共同生産関係が継続する期間を表している。(p135)
・GMが、自動車購入資金を提供する銀行や他の資金提供企業から非常に高いマーケット・シェアを奪い取れたのは、提供作品パッケージの<範囲>の拡張のいい事例。(p138)
・提供作品パッケージのデザインには、①リスク・不確実性の測定、②不測事象あるいは偶発事項発生に伴うリスクの削減能力、③不測・偶発事故発生時の影響を包み込む能力、対応する能力、吸収する能力、④前段で記した構成要素に対応する関心、動機付け、⑤緊急事象の影響に対する耐久力、を盛り込んでいる点を理解することが重要である。(p138)
・提供作品パッケージのリスク共有化デザインのパラメータは、①独立したリスクのパッケージの開放および価格設定、②リスクの処理・削減行動の奨励・動機付け・報酬、である。(p139)

3.構造革新
18章 ビジネスと産業構造の革新の進展
・新技術、グローバル競争、市場変化が、さらに広範囲の価値創造の選択肢を開放し、パッケージの構造革新が可能になった。このことで価値創造システム全体が今変化している。(p140)
・現在のビジネスおよび産業が根本的に再定義されたり、時には消滅したりしてしまうような活動の再配分のプロセスを「ビジネス構造の革新」と定義する。(p141)
・ビジネスの構造革新は、次の3つのレベルで発生する。L1:企業が提供する作品パッケージ(ビジネス開発は、企業が提供する作品パッケージの革新)、L2:組織(組織の境界、組織相互間の配列の革新)、L3:組織づくりのコンセプト、精神的なイメージ(現在とは異なる準拠体系の開発)。(p141)
・提供作品パッケージの変革は、組織境界を決定付ける顧客企業/価値提供企業のインターフェイスを変容させる。(p142)
・ビジネス戦略の優劣は、企業が提供する作品パッケージおよびその仕組みで決まる。(p142)
・著者たちの研究の結論は、「顧客を求めて市場で相互に競争するのは、企業ではなく企業が提供する作品パッケージである。」、「自社の手元に残る現金は、両者間の価値共同生産関係において、価値提供企業および顧客企業が遂行する活動の間に残る差額を構成する価値の<残余分>である。(p142)
・①戦略的意思決定および②組織機構と組織プロセスの革新と③提供作品パッケージのデザインの革新とを連鎖させ、効果的な組織機構および組織プロセスを通じて①と③を連鎖させることができる企業が、競争に勝利する構造革新を達成できる企業である。(p143)
・自社が構造革新に成功するか、他者の構造革新の標的になるかの二者択一こそが、今出現し始めている新しい経済の正真正銘の選択なのである。(p143)
・新時代への構造革新は精神的なイメージ・レベルで決まる。(p143)
・精神的なイメージ・レベルに立つ著者の構造革新の枠組みを通じて、提供作品パッケージのデザインおよび組織の可能性を眺めれば、世の中に<成熟>ビジネスは一つも存在しない。そこにあるのは<成熟した>準拠体系だけである。
・新しい「価値生産」の現実に適したメタファーは、「提供作品パッケージ」、「濃密性」、「流動性」、「構造革新」などである。

19章 なぜ構造革新を行うのか
・①価値創造システムの内部の状況、②進入企業の状況によってゲームのルールは変化している(Normann,1989)。ゲームのルールが変化するときには、新しいインターフェイスが導入され、価値創造システムの構造が革新される。(p147)
・インターフェイスの定義やパートナー企業との仕事の最適な分担を考え直そうとしない企業は、競争で完全に取り残されることになる。(P148)
・インターフェイスやパートナー企業との役割分担の変化が一般的になるのに応じて「自社の現存組織(存在意義)とは何か?」という点を明らかにする必要がでてくる。(p148)
・ネットワーク価値創造のもとで、顧客企業と価値提供企業間のインターフェイスを、提供作品パッケージという形で姿を表している価値共同生産関係として眺めることができれば、企業は、インターフェリスをダイナミックにしかも継続的にその定義を革新し、その構造を革新することができる。これが、現在出現し始めている経済のもとで競争力を継続する最良の道である。(p148)
・構造革新こそ、自社のコンピタンス開発と顧客企業の開発の適合を可能にする一種のメタコンピタンス(Know-what、Know-whoを包括するタイプのコンピタンス、Know-why)である。(p148)
・現在出現しつつある経済環境のもとでは、自社自らが構造革新を行うか、さもなければ他社の構造革新の標的になる、全ての企業は正にこの二者択一を迫られている。(p149)
・競争とは顧客企業基盤を求める闘争である。(p149)
・顧客企業の価値創造において、最初にそして最も顕著な形で明らかになるコスト、売上高を計算することからスタートするのが、決定的に重要になっている。(p150)
・資産として顧客企業の重要性の増大を考慮すると、企業の意思決定を行うにあたって自問自答すべき決定的に重要な質問は次の3つである。①この資産をどんな方法で大事に取り扱ったらよいか?②この資産の潜在価値をどのように上手に活用したらよいか?③この二つの質問に対する具体的な責任者は誰か?(p152)
・資産としての顧客基盤のアセスメントポイントは次の3つ。①顧客基盤関係の質と量の変化、②顧客企業が創出する収益のモニタリングがどの程度できているか?③自社が顧客企業から得る収入の減少具合はどうか?(p152)
・顧客企業は、従来に比べてはるかに行動的になり、豊富な情報を持っており、洗練されてきている。このため、現存の関係を当たり前とするのが難しい状況になっている。(p153)
・顧客は、自分の時間を節約するか、充実させたいと思う。自分の支出および消費が自分のライフスタイルおよびアイデンティティに適合し、それを充実させることを好む。(p153)
・単純型、一方通行方、逐次型、取引型のビジネス論理から、価値共同生産型、双方向型、同時型、関係型のビジネス論理への移行は、顧客関係における分配金の増大の結果であると同時に、それへの貢献の結果でもある。(p157)
・組織セグメントの形態であれ、個人的な価値創造者の形態であれ、企業の組織は顧客のニーズ・ウォンツを反映するようになっている。(p157)
・長期の関係では、自社と顧客企業、この両者にとって、顧客企業の高い収益性を保障することが重要である。「もし自社が顧客企業の世話をしないなら、他社がそれを引き受けるに違いない。」(p158)
・「自社が満足した顧客を持っていなければ、自社のビジネスは存在しない」というのは本当であるが、「満足した顧客が収益性の高いビジネスを創造する」というのは非常によく見られる基礎的な誤謬である。(p158)
・もし顧客企業が、自社にとってますます決定的に重要な資源になりつつあるのであれば、経済理論の教えからすると、その顧客という資源あたりの利益を監視しなければならない。
・自社の売上高は顧客企業のコストである。顧客企業のコストは自社の製品購入費用以外にも、①注文数に関連するコスト、②注文の規模に関連するコスト、③顧客が価値提供企業とが関係を結ぶ方法に関連するコスト、④価値提供企業がある特定の顧客企業に対して払う特別の関心に関連あるコスト、⑤価値提供企業がある特定顧客に対して「例外的な形で」貢献する特別の資源に関連あるコスト、⑥価値提供企業が資源を利用する個人価値の著しい技能および性向に関連するもの、がある。(p160)
・顧客企業の潜在利益は、顧客企業が購入する潜在ビジネス力と提供作品パッケージによって決定される。(p163)
・顧客企業の潜在ビジネス力は、自社が提供する作品パッケージの2つの次元<時間(繰り返し購買)>と<範囲>が定義する領域によって幾何学的に表現される。(p163)
・自社の成功は、自社が顧客企業の成果達成を援助する内容(自社の提供作品パッケージのレバレッジ効果)に関係がある。(p163)
・自社は顧客のニーズの充足という源泉から現金を創出するのではなく、その価値創造の効果的なリバレッジという源泉から現金を創出する。(p163)
・バクスタ-でさえも、ことによると軽減負担方の役割から機会付与型の役割の移行(単なる「作品パッケージ提供企業」から「コンサルテーション提供企業」への内包された問題点の一つの例証なのかもしれない。

20章 構造革新で成功した企業の事例
・新技術を活用した提供作品パッケージのデザインおよび顧客の時間配分の選好に関する卓越した理解は、革新的なビジネス・アイディアを可能にする。時には、そのアイディアが新しいタイプのビジネスを創造する。(p171)
・アメックスは旅行者に対するサービスを提供する企業である、というアイデンティティを持っていた。同社は旅行と旅行費用を容易にし、両者の間に均衡をとるシステムと顧客の旅行の習慣に関する知識を獲得し、効果的に価値創造プロセスに適合できたので、金融サービスに成功裡に参入できたと結論付けてもよいのではないだろうか。(p174)
・侵入企業は、既存立役者たちのインターフェイスのレベルとは異なる戦略的なレベルで、顧客の意思決定プロセス(既存立役者のインターフェイスの死角)に参入する場合が多い。(p174)
・GCの競合企業(リース会社)は、GCの顧客企業(エンドユーザ)に対し、①機器サービス契約のデザイン、②GCのディラーと競合するサービス・センター、③純正スペア部品よりも低廉な「海賊版」の発展の奨励、④機器のオペレータに対する研修・教育の販売、⑤機器運転に対するパッケージ契約の締結、を展開することでGCの市場に侵入した。(p175)
・GCの盲点は、顧客企業の価値創造プロセスにおける自社の位置づけでその製品を定義したのではなく、自社の製品でその産業を定義したのである。これこそが、作り付けの盲点だったのである。(p176)
・侵入企業は、時には時には新しい構成要素を活用して、時には、古い構成要素を活用して、時には現存の構成要素の組み替えを行うだけで、生産システムを中央突破し、それを新しい形態や組み合わせの形で統合し直す。(p181)

21章 継続的な改良の必要性
・不断に変化する環境における自社の生存のためには、構造の改良、構造革新のプロセスが必要である。(p186)
・立役者に対して新しい役割を割り当てる革新は、自社が機会を識別・獲得し、環境変化に対応する<継続的な>監視行動、すなわち「コンセプト研究」(Van Heijden,1993)から発生する。これは価値創造論理からも導かれる。(p186)
・知識を資源として取り扱うこと(p188)
・企業が提供する作品パッケージは、人間の「この時間と場所」の行動を通じて、さらに事前にパッケージ化された「財」を通じて顧客企業に知識を移転する。(p188)
・知識創造システムにおける人間の効果性は、①人間が関与するチーム、②人間がアクセスを持つ用具およびネットワーク、③人間がその一部となっている経営の組織機構および全社的な支援システム、④人的資源および人間が参加したことのある専門能力開発プログラム、⑤人間を導く情報、「理論」、「世界観」、価値、論理、行動規範、によって決定される。(p188)
・ある個人が知識が豊富であり、高度の教育を受けており、経験が豊富であり、さらには意欲が強いからといって、必ずしもそれだけで行動が伴うというわけではない。これらの資源と他の資源が動員され行動に移されたときに初めてその個人の「コンピタンス」について語ることができる。(p189)
・コンピタンスは、立役者がどれだけの量の知識を自由に駆使できるかによっても決まる。(p189)
・構造革新は、①顧客企業基盤の開発、②自社のコンピタンス開発、の両者が相互に進展することを保障するのである。これらの適合関係が知覚可能で、検証可能になるようなデザインの確信を提供したときにコンピタンスの開発は明白になる。(p190)

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